2020Sep北海道10Days DAY03-No.5 義経と狼と宇宙人

アイヌの始祖伝説について。
北海道にはアイヌ関連の施設が各地にチラホラあり、住んでいた住居が再現されていたり、着ていた衣服や使っていた道具などはきれいに洗浄されてガラスケースの中に納まっていたりしている。が、こと言語や伝承、伝説の類についてはどうも歯切れが悪い。文字を持たなかったゆえ十分なカタチで後世に残らなかったのだろう。そのなかで気づいたことは彼らの「始祖伝説」にはおおむねふたつの系統があるようだ。ひとつは「狼系」、もう一方は「降臨系」。

前者の「狼系」はざっとこんな感じ。
<…昔、日高の海岸にどこかの国の女神が小舟で流れ着いた。海岸で困っていると、狼が現れて助けてくれた。狼は女神を沙流川の上流へ連れていき、そこで一緒に暮らした。そのオオカミと女神の間にできた子供らがアイヌの祖先になった>というお話。

どのような印象をもつだろう。
北海道の狼は明治時代に絶滅してしまったので、すぐにはピンとこないかもしれないけど、昔は「エゾオオカミ」という、ニホンオオカミとは微妙に異なる種の狼が生息していたらしい。「熊送り(イヨマンテ)」であれだけ熊を神聖な神の使いとして扱っておいてなぜかここは狼。アイヌにとっては狼の方が格上なのかしら。「エゾオオカミ」は開拓時に銃や毒餌などで徹底的に殺処分されて絶滅に至ったが、その際アイヌはその非道に抗議したというはなしは聞いたことがない。

ところでこうした「狼と交わった」系の始祖伝説はユーラシア大陸北部のモンゴル高原周辺にいた遊牧民や狩猟民、とりわけ「テュルク系」遊牧民のあいだで広まっている始祖伝説と非常によく似ている、とぼくは思った。実際そちらから伝わったのだとしたら、伝播ルートはやはりモンゴル高原またはバイカル湖→アムール川→サハリン→北海道というルートだろうか。 

さて、もうひとつの「降臨系」は日本の「天孫降臨」とよく似たタイプ。
口承なので北海道の各地にいろんなパターンがあるようだ。
基本的に「オキクルミカムイ」という神さまが降臨して、人々に家の建て方や農業、造船の技術を伝えた、というもの。その神様が降臨したのがここ平取にあるハヨピラという場所だそうで。残念ながらこの神様を奉る建物や奉納するアイヌ式の舞や歌なども特に残っていない。おそらく先の義経神社はこのオキクルミカムイの伝承と、義経北行伝説を重ね合わせた、江戸幕府による当時のアイヌ同化政策の一環だったのだろうと想像する。

源義経、狼、オキクルミカムイといろいろ登場してきたが、最後に登場するのは「宇宙友好協会」というUFO研究団体。

なんでも天から降臨したというオキクルミカムイは「宇宙人にちがいない」と主張し、UFOとコンタクトを取るべく、平取の小高い丘を購入し、そこになんとUFO基地を作ってしまった。うーむ、このようなオカルト系の人たちの行動力は生半可ではない。1960年代のことである。その後主催者はUFOに無事?連れ去られたのか、行方不明になってしまい団体は雲散霧消、UFO基地だけ放置されて廃墟となって現在に至る。その廃墟はいまも平取の町のはずれのハヨピラにある。
義経、オキクルミ、UFO、廃墟、ダム、狼伝説。
このように刮目すべき平取だが、最後に二風谷アイヌ文化博物館を覗いて先へ進むことにする。

つづく

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