2020Sep北海道10Days DAY04-No.2 ワイン城からオンネトーへ

残念ながら池田ワイン城ではワインを試飲するわけにもいかないので、レストランにて「ワインカレー」をいただく。ぼくも家でカレーを作るときにはいつも赤ワインを入れるのだけど、やはりプロはちがう。そんなお手軽ワインカレーなど足元に及ばない、酸味を感じさせない芳醇なワインの香りとじっくり時間をかけた深みのあるカレーだった。十勝平野を一望する眺めのよさも加えて、とてもおいしかった。ちなみに昨晩すごしたライダーハウスでの食事はスーパーの半額シール付納豆巻きであった。

ワイン城をあとにして国道242号を阿寒湖方面へすすむ。路上からあらためてよくみるとこのあたりはワイン用のブドウ畑が多いことに気づく。こんなに寒冷な土地でもワイン用のブドウは育つのだとすこし驚く。もともと北海道は稲作もできなかった土地だ。(だからこそ稲作中心の弥生文化が本州から伝播せず、木の実の採集や漁労、狩猟で糧を得る縄文文化が継続し、やがてそれがアイヌ文化の下地になった)それがいまや「ゆめぴりか」「ななつぼし」といった美味しい米の代表格ともいえる米の一大生産地になっているのは、稲作に携わる人たちのたゆまぬ努力と技術の革新の賜物だろう。北海道のワイン産業もやがてそのように育ち、芳醇に香り、熟成してゆく予感を抱く。

と、もちあげておきながら余計な一言を添えると、赤だろうが白だろうがやっぱりワインの味と香りは日本の食文化とは微妙にマッチしない、ような、気が。

国道242号は本別をすぎ、足寄から東に折れて国道241号へ。小一時間走りつづけオンネトーに立ち寄ってみたものの、どういうわけだろう、なにも心が動かなかった。だいぶ昔、はじめてここに訪れたときはここの「湖面の揺らぎ」に神秘的な何かを感じてしばらく佇んでいたものだがなぁ。そういえばここから2,30分ほど歩いたところに「湯の滝」という、無料の露天風呂があった。たしか岩手県からきた日本一周中のライダーと談笑しながら入浴した記憶があるが、その無料の温泉も現在は無くなってしまったようだ。

一抹の寂しさとともに道は阿寒湖へ。

つづく

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2020Sep北海道10Days DAY04-No.1 北海道ワインあれこれ


道内二日目。朝10時すぎ、帯広のライダーハウス「ヤドカリの家」を発つ。
今日の最終目的地は釧路。二日前からすでに駅前のビジネスホテルに予約を取ってある。今日最初に訪れた場所は帯広から東へ30分ほど走ったところにある池田町。ここにある「ワイン城」にはじめて来てみた。


ところで、バイクで北海道を走っていると、みやげ物屋さんやコンビニやスーパーの棚で十勝ワイン、富良野ワイン、北海道ワイン、おたるワイン、余市ワインといった北海道産のワインをみかけることが多くなった。意外に銘柄も多く、巷間普及がすすんでいるようだけど、手に取ってみるとラベルに書かれている地名が産地なのかブランドの一種なのか、特に道外からきた者にとってはいまひとつわかりにくいような気がする、というわけでぼくの備忘録として簡易ながらここでまとめてみる。

「十勝ワイン」というのは池田町がはじめた「池田町ブドウ・ブドウ酒研究所」がつくるワインのブランドのひとつであり総称、代名詞ともいえる。まさに北海道でのワイン産業の草分け。寒さに強い北海道自生の山ブドウを品種改良した葡萄で造る「山幸」「清舞」のほか廉価版?「トカップ」シリーズがある。材料の葡萄は池田町周辺で収穫されたものをメインにしているが、生産量と経営の安定のためか輸入した葡萄果汁なども使用しているようだ。


「ふらのワイン」は同様に富良野市が経営する富良野市ぶどう果樹研究所という工場でつくられるワインのブランドのひとつで、やはり総称的にも使われている。上記十勝ワイン同様、農業基盤の安定を目的の一つにした自治体の率先したワイン産業で、工場見学など観光にも力を入れていて十勝に次ぐ歴史もある。基本的に富良野市内で生産された葡萄を使い、富良野市内にあるワイナリーで生産している。地元富良野産の葡萄だけではまだ生産量が多くないせいか、北海道内のスーパーでたまに見かけるがあまり宣伝などしていないようだ。

「おたるワイン」は小樽に本社のある「北海道ワイン株式会社」というワイン製造会社のブランドの一種。食用葡萄を使用したかなり甘口のこの「おたるワイン」ブランドのほかに、使用する葡萄の産地により「鶴沼ワイン」ブランド、「北海道ワイン」ブランドがある。葡萄の産地や品種にはあまりこだわりはないようで北海道産のものが多いが、道外のものも多用する。北海道全域でみられるが、「おたるワイン」は本州の(ぼくの住む関西地方でも)少し大きなスーパーでも見かける。よく普及しているうえに「北海道ワイン」という社名とブランドを持っているため、我々一般の消費者にとってはすこしややこしい。

「余市ワイン」。余市といえば小樽のすぐ西隣の町だが上記北海道ワイン株式会社とは関係のない別会社のワイン。「日本清酒株式会社」という 札幌に本社のある 日本酒や味噌などを製造している会社が、余市で運営しているワイナリーで作ってるワインのブランドのひとつ。果樹栽培がさかんで有名な余市で収穫された葡萄のみを使い、余市で醸造とボトル詰めも行い「100パーセント余市産」であることが特徴。葡萄はドイツやオーストリアなど寒冷地に適した葡萄を移植栽培しているようだ。いまのところまだあまり数は作れないせいか、道内でも現地以外ではあまり見かけない。

他にも千歳や洞爺湖などで小規模ながらこだわりのワインを作っているワイナリーもあるのだけれどぼくはまだ飲んだことがなく、ワイナリーに訪れたこともないので、またいずれかの機会に。

と、かように「北海道産のワイン」といっても、北海道で生産された葡萄を用いた「100パーセント北海道」ワインもあれば、本州から取り寄せたり、外国から輸入した果汁を使って「北海道で醸造した」ワインなどがあるようだ。値段も「100パーセント系」は3000円以上したりするが、それ以外は1000円前後からと、けっこうリーズナブルなものが多い。

と、まぁ今日のところはここまで。

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2020Sep北海道10Days DAY03-No.6 帯広、ヤドカリの家

国道237を北へ進み、道の駅日高を左に折れて国道274、通称「石勝樹海ロード」をゆく。この先の日勝峠、はれたら十勝平野を望むよいパノラマ、なんだけどどう見てもどうみても雲に覆われている。

雨は降っていたが意外にも道の視界は悪くなかった。が、日勝峠を越え、道が下りに転じた直後のトンネルを出たとたん、雲に覆われ一瞬のうちに視界がなくなる。幸いすぐに近くに避難できる場所があったので、じぶんの後に大きいトラックが通過するのを待ち、そのテールライトを追いかけるようにして無事に道を下ると十勝清水。


ここからは帯広市街まで30分ちょっと。時刻はすでに16時を過ぎて暗くなりかけていた。<Go toトラベル>を利用して十勝川温泉に素泊まりで泊まるか、帯広駅前のビジネスホテル泊か。考えあぐねながら、とりあえずJR帯広駅をめざして進む。

走行中、ずいぶん昔に訪れたライダーハウスがあったことを思い出した。名前はたしか、ヤドカリ。当時はカニの家やミツバチの巣?などたくさんのライダーハウスがあってどこも旅人でいっぱいだったけど、今はもう宿もライダーも少ないのね。今年のツーリングマップルにまだ載っているので立ち寄ってみる。正確には20年前に一度訪れたけど、気の弱い学生だったぼくは、独特の雰囲気に気圧されてしまい、泊まらずに素通りしてしまったのだった。現在はどうなっているのか。

ライダーハウス「ヤドカリの家」。実際に泊まってみると帯広駅近、近くにスーパー、ホームセンター、温泉があり立地条件は申し分ないうえにオーナーご夫婦の人柄、何気ない心遣いと丁寧なコミュニケーションが大変うれしく、また一期一会、同宿の旅人にも恵まれとても心地よい一夜だった。感謝。

つづく

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2020Sep北海道10Days DAY03-No.5 義経と狼と宇宙人

アイヌの始祖伝説について。
北海道にはアイヌ関連の施設が各地にチラホラあり、住んでいた住居が再現されていたり、着ていた衣服や使っていた道具などはきれいに洗浄されてガラスケースの中に納まっていたりしている。が、こと言語や伝承、伝説の類についてはどうも歯切れが悪い。文字を持たなかったゆえ十分なカタチで後世に残らなかったのだろう。そのなかで気づいたことは彼らの「始祖伝説」にはおおむねふたつの系統があるようだ。ひとつは「狼系」、もう一方は「降臨系」。

前者の「狼系」はざっとこんな感じ。
<…昔、日高の海岸にどこかの国の女神が小舟で流れ着いた。海岸で困っていると、狼が現れて助けてくれた。狼は女神を沙流川の上流へ連れていき、そこで一緒に暮らした。そのオオカミと女神の間にできた子供らがアイヌの祖先になった>というお話。

どのような印象をもつだろう。
北海道の狼は明治時代に絶滅してしまったので、すぐにはピンとこないかもしれないけど、昔は「エゾオオカミ」という、ニホンオオカミとは微妙に異なる種の狼が生息していたらしい。「熊送り(イヨマンテ)」であれだけ熊を神聖な神の使いとして扱っておいてなぜかここは狼。アイヌにとっては狼の方が格上なのかしら。「エゾオオカミ」は開拓時に銃や毒餌などで徹底的に殺処分されて絶滅に至ったが、その際アイヌはその非道に抗議したというはなしは聞いたことがない。

ところでこうした「狼と交わった」系の始祖伝説はユーラシア大陸北部のモンゴル高原周辺にいた遊牧民や狩猟民、とりわけ「テュルク系」遊牧民のあいだで広まっている始祖伝説と非常によく似ている、とぼくは思った。実際そちらから伝わったのだとしたら、伝播ルートはやはりモンゴル高原またはバイカル湖→アムール川→サハリン→北海道というルートだろうか。 

さて、もうひとつの「降臨系」は日本の「天孫降臨」とよく似たタイプ。
口承なので北海道の各地にいろんなパターンがあるようだ。
基本的に「オキクルミカムイ」という神さまが降臨して、人々に家の建て方や農業、造船の技術を伝えた、というもの。その神様が降臨したのがここ平取にあるハヨピラという場所だそうで。残念ながらこの神様を奉る建物や奉納するアイヌ式の舞や歌なども特に残っていない。おそらく先の義経神社はこのオキクルミカムイの伝承と、義経北行伝説を重ね合わせた、江戸幕府による当時のアイヌ同化政策の一環だったのだろうと想像する。

源義経、狼、オキクルミカムイといろいろ登場してきたが、最後に登場するのは「宇宙友好協会」というUFO研究団体。

なんでも天から降臨したというオキクルミカムイは「宇宙人にちがいない」と主張し、UFOとコンタクトを取るべく、平取の小高い丘を購入し、そこになんとUFO基地を作ってしまった。うーむ、このようなオカルト系の人たちの行動力は生半可ではない。1960年代のことである。その後主催者はUFOに無事?連れ去られたのか、行方不明になってしまい団体は雲散霧消、UFO基地だけ放置されて廃墟となって現在に至る。その廃墟はいまも平取の町のはずれのハヨピラにある。
義経、オキクルミ、UFO、廃墟、ダム、狼伝説。
このように刮目すべき平取だが、最後に二風谷アイヌ文化博物館を覗いて先へ進むことにする。

つづく

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2020Sep北海道10Days DAY03-No.4 源義経と北海道

太平洋沿いの国道235号を左に折れ、内陸の国道237号へ入る。この道はおおむね沙流川に沿って日高までつづく。しばらく行くと左手に平取の町が見える。平取と書いて「ビラトリ」とよむ。バイクで走っているとつい素通りしてしまいがちだけど、この小さな町はけっこう興味深い。

まず、この町の外れにある「義経神社」。
「義経北行伝説」というのをご存じだろうか。兄・源頼朝に命を狙われ、奥州藤原氏の本拠地、岩手県平泉で自害したはずの義経はじつは生きていて、ひとまず北海道まで逃げた後、樺太を経て、満州、モンゴルまで至り、英雄ジンギスカンになって世界を征服し…という「おはなし」。さらにその「おはなし」を世に広めたのは江戸時代の鎖国中、長崎でオランダ人のふりして滞在していたドイツ人、シーボルトとだというのもおもしろい。遠い長崎で「鳴滝塾」を開いていた人ね。

こんな話モンゴル人にしたら怒って日本に攻め込んできそうだけど、義経は実は平泉から北海道に渡った、というあたりまでは、奥州藤原氏と黄金にまつわる日高アイヌのネットワークを生かせば(先の記事参照)十分ありうるのでは、ないかい!?

「おはなし」にはいろいろおヒレがついて、600年ほど経った頃にはその義経が現地のアイヌに農業や造船やらの技術を伝えたということになっていて、「ハンガンカムイ(判官の神?)」、つまり生き神様として奉られたりもしている。チンギスハンになったり、まったくいそがしい人だ。

この神社が創建されたきっかけはそれほど昔の話ではなく、いまから220年程前の江戸時代末期、1799年のころ。近藤重蔵という探検家が江戸幕府の命で「蝦夷地」を探検していた時、前述の「おはなし」を耳にしてなんとなく小さな祠をたて、そこに木彫りの義経像をおいてきたのがはじまりらしい。
これまた面白いことに、その近藤重蔵という人は北海道の歴史には欠かせないどころか、今も昔もさらには未来までも日本とロシアとの領土問題にもかかわってくる。いわゆる北方領土の択捉島に「大日本恵土呂府」の柱を立ててきたのがこのお方。北方領土にまつわる話はまた後日、根室と納沙布岬を訪れたときのことを書くときに少しふれてみたい。

この平取にはもひとつ興味深い話がある。それはアイヌの始祖伝説と宇宙人。
つづく。

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